バンコク近郊 サムットプラカーンの超ローカル巨大祭りと美しき仏塔

バンコク近郊 超巨大祭りの狂騒とライトアップされた美しき仏塔

タイのお祭りというと、毎年4月に行われるソンクラーン(水掛け祭り)や11月に行われるロイクラトーン、同日にチェンマイで行われるコムローイで有名なイーペン祭りなど、日本のお祭りとは少し違ったイメージが浮かんでくるのではないかと思う。

日本のように寺の中に屋台が並ぶようなお祭りもタイにもあるが、「地元では有名なお寺」で数日程度開催されるものが多く、目にした事もない日本人がほとんどだろう。

常日頃からバスやソンテウに乗って郊外をうろついている私は何度かこういった「地元のお祭り」に遭遇した事はあるのだが、特にこれといって話題にあげるほどの特別感はなく、これまではタイの郊外を出歩く楽しさの一要素にしか過ぎなかった。そう、あのお祭りに出会うまでは…。

サムットプラカーン県パークナムの場所

10月29日~11月9日までの12日間、サムットプラカーンのパークナムという場所と、その対岸にあるお寺プラサムットチェディで開催された、桁違いに大きいお祭りへと遊びに行ってきた。

「サムットプラカーン県」とはバンコクの東に隣接した県で、BTSサムローン駅あたりはバンコク都から外れサムットプラカーン県に突入している。

お祭りの開催場所であるバークナムは、BTSサムロン駅からソンテウに乗り、10分ほど東進した場所にあるエリアだ。(取材時点での終着駅はサムローン駅)
詳しくは以下Googleマップをご覧いただきたい。

 

外国人はほとんど来ない巨大&超ローカル祭り

この祭りについてはたまたま開催情報を掴んだ。そしてたまたま暇だったので開催2日目にふらっと遊びに行ったところ、そのまま祭りの虜となり、結果的に開催12日間のうち9日間もこのお祭りに足を運んでいた。たまたま9日間も暇だったのだ。本当にたまたま暇で良かった。
とはいえ、期間中たまたま9日間も暇だったとしてもそれだけではわざわざそんなに通わない。このお祭りはこれまで私が訪れた数々のスポットとは比にならないほどの圧倒的な活気や初めて見るもの、滅多に目にしないものたちが凝縮され、興奮のあまり9日間も通うという気違い沙汰にさせてしまったのだ。

本記事では、私を狂わせたこのお祭りについて紹介したい。

ほんとうは9日間の濃厚な思い出すべてを紹介したいのだけど、本気で書くと1万文字は軽く超え、半分以上の文字数が削除されてしまうことは間違いない。
というわけで、中でも印象に残ったものを5位から1位のランキング形式にまとめ紹介することにした。

5位:凄まじい人出!

サムットプラカーン県のパークナムと聞いて、場所や雰囲気が思い浮かぶ人はきっと多くない。実際、特に何がある訳でもなくさして大きくもない街だ。そんな場所だけに、凄まじい群衆を目の当たりにするのはインパクト大。 以下写真を見てもらえれば少しは伝わると思うが、かなり大規模なお祭りなのだ。バンコクでもこれだけの群衆に出会える機会は滅多になく、しかも外国人観光客がほぼゼロという場所はなかなかないだろう。

私がこのお祭りの虜になった要因の一つは「活気」。観光客はほとんどおらず、ほぼタイ人だけで賑わっているだけに、むせ返るほどのローカル感が味わえた。

開催場所の入り口となるエリア。道路まで人が溢れ出している。白くモヤモヤしているのは、隙間なく並ぶ屋台からのぼる煙だ。

4位:珍しいタイのお菓子「カノムラー」

このお祭りでは初めて見た食べ物も色々あるのだが、その中で最も印象に残ったのがこのカノムラーという名のお菓子だ。調べたところ、タイ南部のナコンシータマラート県が発祥だそうで、仏教にもゆかりのある伝統的なお菓子だということが分かった。
 
印象的なのはその作り方だ。
 
流れるような一連の作業は見ているだけで楽しく、カノムラー作りをしている屋台の前では何度も足を止めてしまい、ついつい見入ってしまう。
簡単に出来そうに見えてコツがいる作業なのだろうか。ちょっと挑戦してみたい気もする。
タイのお菓子はかなり甘いという印象があるけれど、このカノムラーは日本人にも好まれそうな適度な甘さで、サクサクとした軽い歯ごたえもよく、広く好まれそうな美味しさだった。
 

最終的にはこのように袋詰にして売られていて、1袋(4~5本)で40バーツ前後といった値段で買える。

 

 
タイの郊外のお祭りでは、観覧車などの移動遊園地が出ている事が多くちょっとしたアトラクションも楽しめる。3位と2位はそんなアトラクション系の中でも、ここで初めて見たものを紹介したい。
 

3位:回転ディスコ(タガダディスコ)と、その上で踊る狂人たち

タガダディスコとは円盤型の乗り物に席が設置されているアトラクションで、最初はゆっくりと回転。稼働とともに爆音ミュージックががんがん流れ、円盤上の人々は思い思いに踊り始める。ゆっくりと回転しているうちは穏やかに見物できるのだが、そのうちだんだんと回転速度があがり、しかも上下に揺れるなど動きが不規則かつ激しくなっていくという、安全性を完全に無視したアトラクションだ。

 
高速回転かつ不規則な動きをした円盤上でまともに踊れるはずもなく、諦めた人々は次々に着席していく。しかし稀に、危険な速度で回転する中でも悠々と踊り続けられる狂人もいて一興。きっと、身体が回転に慣れるまで何度も乗り続けたのだろう。脳内から大量に放出されるドーパミンは、判断能力に幾ばくかのダメージを与えていると思われる。
 
円盤の動きはスタッフが操作している。この円盤が不規則な動きをしているのはこいつの仕業であり、危険性を極めて高くしている張本人である。次々と脱落していく円盤上の人々を眺めながら、さぞにやけているに違いない。
 
狂人たちがダンスしているタガダディスコは、パークナム対岸にある仏塔プラサムットチェディすぐ近くにあることも特筆しておきたい点である。
この祭りは仏教イベントなので敷地内で酒類の販売は禁止されているのだが、煩悩全開で腰を振ってノリノリで踊るのは問題ないらしい。仏教徒ではない自分にはその線引きが全く分からない。
画面右下にいる、音楽や狂乱に一切反応せず座っているおばちゃんに50バーツ払うと、このアトラクションが体験できる。
 
※マシーンに書かれている「TAGADA」の文字を元に調べたところ、どうやらグアムにあるアミューズメントパーク、その名も「タガダグアムアミューズメントパーク」に以前からあるアトラクションらしいことが分かった。(ただし古い記事ばかりがヒットするので、現在もあるかは不明)
 
グアムでは、座った状態で高速回転を楽しむ絶叫アトラクションのようで、このお祭りのようなロデオ感覚でダンスを踊るような感じとは少し違っていた。タイで進化したのはSUSHIだけではなかったのだ…!
 

2位:小屋が崩壊するか!?「Wall Of Death」

「Wall of Daeth」、その名の通りスタント系のエンターテイメントだ。動画ではうまく撮影できなかったが、15秒あたりでバイクのライダーが右手を伸ばしているのは、観客が差し出しているチップの20バーツ札を掴もうとしているのだ。直接手が触れあえるような距離まで接近してくるわけでとにかく迫力がすごい。そりゃ怖い。絶叫してしまった。
 
ちなみに、このチップをかっさらっていくのは定番のパフォーマンスなので、もし見に行くことがあればぜひこのチップ手渡しに挑戦してほしい。(実際に私も挑戦してみたものの、眼の前にバイクが迫り来るのが怖すぎて手を引っ込めてしまった)
 
また、このパフォーマンスのスリルがさらに増す要素がもう一つある。危険性の高いパフォーマンスを繰り広げているにも関わらず、小屋の作りがとにかく「雑」。ぐるぐると周るバイクや車が走っているのは木製の壁であり、目の前を通るたびに小屋の骨組みが軋みをあげたわむのが体に直接伝わってくる。ほんとうに小屋が崩壊するんじゃないかと思い、動画撮影中に思わず絶叫。私の黄色い声がしっかり収録されている。
 
Wall Of Death「Death」には、観客の「命」まで含まれているのだ。
入場料たった50バーツで「Death」を体感できるかもしれないのだからお試しあれ。
 

奥に写る円錐の屋根がWall Of Deathが行われている小屋だ。最終日よりも7日目頃(動画撮影日前後)の方が揺れがすごかったので、もしかしたらあの日は本当にヤバかったのかもしれない。

 

1位:年に一度だけのインスタ映え仏塔「プラサムットチェディ」のライトアップ

祭りの主役である仏塔プラサムットチェディがライトアップがされている姿を見たとき、美しさに心を奪われ深く感動した。私が9日間もこのお祭りに行った動機として、開催期間だけしか拝むことができないこのライトアップ版の仏塔見たさというのがかなりの割合を占めていた。
 
既に書いているようにこのお祭りは、パークナムとその対岸にあるお寺プラサムットチェディで開催されている。パークナムからプラサムットチェディへ行くには渡し船に乗る必要があるのだが、渡し舟の船上からお祭り全体のライトアップを眺めると、これまた美しい。
 

1位はなんといってもこのお祭りの主役でもある、プラサムットチェディのライトアップだ。(撮影:西尾康晴)

暗闇の中、川の向こうに広がるプラサムットチェディ側のお祭り会場。

 
この景色、お値段プライスレスといいたいところだが、これを眺めるには渡し船代の6バーツが必要だ。
三途の川を渡るのには渡し賃6文が必要と聞くが、これは現在の値段にすると300円相当になるらしい。一方こちらチャオプラヤー川を渡るのに必要な渡し賃はたったの6バーツ。いまの日本円レートだと20円ほどだ。6バーツの渡し賃でこんなに美しい極楽浄土のような場所(※個人の感想です)へ行けてしまうなんて、まだまだ三途の川は渡れない。
 
来年も6バーツを握りしめこのお祭りに来よう、チャオプラヤー川を渡ってこの素晴らしい景色を眺めに来よう、最終日にはそう心に誓い、ソンテウに乗ってお祭り会場を後にした筆者若生りんかなのであった。(完)
 

【番外編】仏塔祭りの見どころ

 
さて、実際はこれ以外にもバンコクの中心部や観光地ではあまり目にしないものがまだまだたくさんあり、印象に残ったもの5つだけではのこのお祭りの楽しさを紹介しきれていない気がするのでもう少しだけ紹介したい。
 

郊外のお祭りで時折見かけるミニブタやミニヤギにミルクをあげるコーナー。

郊外のお祭りでは定番感のある瓶ビールの蓋ビンゴ会場。とはいえここは規模の大きさと数は桁外れのスケールだった。マイクを持ってるのが司会進行係、上からぶら下がっているぬいぐるみはビンゴの景品だ。

 

日本のお祭りでよく見るような射的や金魚すくいなどもある。

このお祭りのことをTRIPULL運営者の西尾氏に伝えたところ、ぜひ行ってみたいということで一度アテンドした。彼が興味を持った一つが、日本では見たことのないポップコーンの作り方。確かに見ていて楽しい。

見ていて楽しいのがもう一つ、日本のテレビショッピングと実演販売をかけ合わせたような叩き売りとでもいうのだろうか。

時折コール&レスポンス(?)を挟んだりしながら、見てる人を巻き込んで商品を販売していく。飛ぶように売れたり、全然売れなかったりするのだが、あまり言葉が分からなくてもトークのノリや周囲の盛り上がり具合だけでも十分楽しめてしまう。これは外国人観光客が多いような場所ではまずやっていないだろう。

サムットプラカーン祭りの開催場所 このお祭りは毎年11月頃に開催されるため、本記事で興味を持ったとしても残念ながらすぐに行くことは出来ない。 次回の開催日程が決まればTRIPULLのTwitterFacebookでお知らせするとのこと。

現地までの行き方について述べておこう。 2018年12月、BTSのスクンビット線がこれまでの終点サムローン駅から先に伸び、ケーハーバンプーまで開通したので、開催場所近くのBTSパークナム駅が利用出来るようになり、日本人の多く住むスクンビットエリアからBTS一本で遊びに行けるようになった。 (人出のアニメーションを撮影している場所が、撮影当時はまだ開通していないパークナム駅の改札へ繋がる通路部分なので、まず迷うことはない)

お祭りの開催場所は、このパークナム駅からパークナム海鮮市場の経路になっている道路がメインストリートとなり、開催期間中は周辺の道路も含めて夕方からは車を通行止めにして所狭しと屋台が並ぶ。 厳密にお祭りの開催エリアはきっちりと決められていないけれど、私は主要なエリアをほぼ全て回ったので、屋台の位置や場所を知り尽くしたと自負できる。そんな私が、休憩なしで効率よく西尾氏を案内しても4時間弱ほどかかった…。 とにかく、この祭りの規模はでかい! (対岸のプラサムットチェディと言っている場所は地図上ではチャオプラヤー川を挟んで左側に位置している)

本記事を読まれている方は、バンコクの定番観光地や有名スポットに足を運ぶだけでは飽き足らない方も多いだろう。来年のこの時期に旅行へ来る事を考えている方やまだバンコクに住んでいる予定の方には、少し足を伸ばしてガイドブックに載っていないどころか在住日本人でもほとんど知らないこのお祭りに行く事を是非オススメしたい。

この記事のライターもっと見る

若生りんかの画像

若生りんか若生りんか(わかおりんか) バンコクの公共交通機関が大好きな乗物マニア。一番好きな乗り物は路線バス。公共交通機関だけを使って移動するという縛りプレイのもと時間を見つけてはマニアックな場所を探しさまよい歩いている。 Twitter:https://twitter.com/rinkawakao

関連記事