警官まみれ 激安の殿堂を見た! バンコクのロイヤルタイポリス

警官まみれ 激安の殿堂を見た! バンコクのロイヤルタイポリスがオモロイ

日本の物価の1/3!今すぐ楽園にGO!と謳われる度に「んなことねえ!」と在住日本人が勢いよく燃え出すほど、おトク感が薄れているタイ。爪に火を点すような暮らしならともかく、普通レベルで「もはや東京以上に金がかかる魔都」と断言する者も多い。そんな中、食事や買い物、身だしなみに至るまで激安な穴場スポットがあると聞き、走る産廃と名高い赤バス(値上げ後)に飛び乗った。

ロイヤルタイポリス首都圏本部に潜入

門の内側にはガタイのいい警官が数名、スマホを1秒もいじることなく待機する。

やって来たのは、セントラルワールド、伊勢丹、ゲイソンなどデパートが立ち並ぶ、タイ随一の高級エリア。この一角でひときわ地味オーラを放つ、国家の威信をこねて固めたようなビルこそが、今回の目的地「ロイヤルタイポリス首都圏本部」である。

ところで、滞在7年目を迎えた今もタイ語はさっぱりだが、自分が褒められてる時と他人の悪口だけは、一時的に意識が拡大してよく聞き取れる。タイ国民の間でパブリックエネミーNo.1の座に輝く警察(個人の見解です)に対する不満はしばしば耳にし、とくに検問&説教からのカツアゲコンボを食らいやすいドライバー連中の「警官まじクソ、タカリ屋、マフィアどもめ」といったボヤきは聞き応えも充分だ。

そんなバビロンの本丸を前にイヤな汗が止まらないが、鋭い視線を投げかけてくる門番にひるむことなく、歩を進めてみよう。

お役所プライスの食堂で腹ごなし

目指すは9号館。敷地内には目立つ案内板もなく、似た規格の建物が延々と続いて狂いそうになるため、食堂どこですか?と聞きながら探すのがベスト。たどり着いたら着いたで、日本語はもちろん英語表記もない、飾り気もゼロな「ザ・公僕」といったブースがズラリ。だいたいどこも一食30~40Bとお役所プライスで嬉しい限り。

昼休みの角刈りメンズをかき分けつつ各店を巡回していると、ぶっかけ飯屋の軒先から「おい、日本人か?今日は日本式のカレーがあるぜ」と誘われ思わず注文。自慢気に出されたカレーはホロホロに煮込んだ豚バラに生姜の効いた濃厚ルーがよく絡み、タイ北部名物ゲーンハレーに酷似していた。というかゲーンハレーだろこれ…。白昼堂々、治安の中枢で詐欺に遭った気もするが美味しかったのでマイペンライだ。

入口には17:00まで営業とあるが実際には大半が15:00に店じまい。ご注意を。

奇をてらうことなくド定番のタイ料理だけで構成された激安フードコート。

自称ジャパニーズカレー(40B)。ネーム入りの食券カードや食器がレアい。

合法的にパチもんの警察グッズを販売

日本でも稀に、警察手帳の横流しから懲戒免職をキメる現職や、白バイ警官のガチコスプレで逮捕されるマニアが現れるなど、完全に非合法マーケットの印象しかない警察グッズ。食堂の一角に設けられた売店には、制服から小物類まで豊富に揃い、安価での全身ポリスコーデも夢ではない。そんなグッズを興味深げに手に取り、オーホーゥ、この階級章いいね!タオライ?とカジュアルにお買い上げする警官らの姿が……。その光景をボーっと眺める私に「何が欲しいの?」と売り子さん。なんなんだ、買えるのか?

日本であれば、ラジオライフ主催のペディションでしかお目にかかれない警察グッズ。あれ、いいわけ?と事情通のタイ人に尋ねてみると「あの手の売店では二種類の商品を扱っていて、二つを比べるとバッジの大きさもデザインも明らかに違う。あなたが買えるのは完全にお土産用」とバッサリ。つまり、関係者のみを対象とした正規品と、一般人向けパチもんは厳格に別モノで、われわれだと正規品は購入不可。ですね?「まぁ建前上はね。いろいろ頑張れば正規品も入手できちゃうけどね!」とのことなので、立派なニセ警官を目指す人は、いろいろ頑張ってみてほしい。

警察グッズ店という治安維持の中心地に現れた全裸の男。木を隠すなら森の中?

散髪からフィットネスまで激安

食堂のいちばん奥には床屋もあり、早朝6時からアグレッシブに営業中。多少値上げがあったものの、それでも男性カット50B~80B、女性カット120B~、カラー350B~とその辺の荒れ果てたローカル店より安く、冷房も完備。誰でも利用してよいとのことだが、いまもって勇気が出ないでいる。勇者求む!

建物の階下には白バイのショールームとフィットネスも併設。何年も更新された形跡のないFacebookページによれば、フィットネスは使用料1日50B~と抑え目の設定。マジもんの警官が指導してくれるとはいえ、短期間で耳を餃子にしたい人向けではなく、仕事帰りのOLさんを意識したような講座が中心だ。

その名も「バーバーポリス」。座った瞬間、問答無用で角刈りにされそう。

白バイショップ。手を尽くせば買えてしまうのだろうか。まさかね……。

芝生が美しい中央広場でひと休みしていると、鬼教官にドヤされながら訓練に励むマッチョの群れがやってきた。その姿は「男塾名物」と頭についてもおかしくないほどで、炎天下の中ブッ倒れるまで続く気配すらある。

広場のマッチョ以外にも、すれ違う関係者はみな体格もよく頭も切れそうなエリート風で、だらしなく腹の出た奴や、前歯が欠けた奴は見当たらない。小遣い稼ぎの拳銃転売ヤーもここにはいないだろう。そう思いたい。

出口の門番に記念撮影をお願いすると、いかつい顔つきのまま直立不動で応じてくれただけでなく、安いめしでも食うか!税金の館で!と不埒な動機で侵入してきた私に対し、全員がビシーッと敬礼で見送ってくれた。やべえ、好きになりそう。

カツアゲ、賄賂、もみ消し、権力を持ったチンピラ……。「東南アジアの警察」と聞いて連想するのはこの手の単語ばかりが世のコンセンサスで、おおむね正解なのだが、こうしたキリッとした警官による並行世界もタイ中心部に確かに存在する。逆に闇深レベルが高まった気もするが、その辺の腐敗警官を見すぎて目の腐った人はここでデトックスされてはいかがだろうか。

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万灯レイコ万灯レイコ(まんどれいこ) 在タイ5年の人妻。趣味:フィールドワークという名の場末探訪。量産型ショッピングモールとおしゃれカフェに侵食される前に記録しておかねば。と謎の使命感を胸に日々徘徊。

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